環境への取り組み

Ⅳ. 環境への取り組み

A. 環境に配慮した資産運用

投資対象物件の設備更新や本投資法人と取引関係にある事業会社との連携を通じ、保有する全ての物件を対象に、 省エネ、節水等、環境に配慮した取組みを順次実施しています。

a.大規模修繕
バリューアップ工事を通じた使用耐用年数の長期化による環境への貢献

b.LED照明の導入
2023年7月末時点で、128物件(ポートフォリオの46.2%相当)に導入しています。

c.屋根面への遮熱塗料の塗布

d.入居者に向けた省エネの呼びかけを実施
(ポスター掲示、情報誌「RESIDIAニュース」の配布、サステナビリティガイドの配布)

e.プロパティ・マネジメント会社の評価に際し、「環境に関する取り組み状況」を評価基準の一つとして位置付け

f.ビルメンテナンス会社との環境配慮に関する目標共有及び協働

g.カーシェアリングの導入
2023年1月末時点で、3物件(ポートフォリオの1%相当)に導入しています。

h.その他の取り組み
ヒートアイランドの軽減やCO2削減対策として緑地を設置したり、都市型水害や地盤沈下緩和対策としてインターロッキングブロックを設置しています。

1. 大規模修繕 / バリューアップ工事実施により耐用年数長期化

資産価値の維持及び建物使用耐用年数の長期化を図ることで、投資主価値の向上及び環境への貢献(ライフサイクルCO2の削減)を目指しています。

2. 目標と実績(エネルギー消費量・CO2排出量・水消費量・廃棄物量)

IRMは、「環境パフォーマンスデータ管理基準」を策定し、「サステナビリティ方針」を実践すべく、本投資法人の保有する不動産ポートフォリオのエネルギー効率化を図り、エネルギー消費量及びCO2排出量(GHG)削減に努めています。

ポートフォリオ全体においては、2030年度までにエネルギー消費量を20%(原単位)削減、CO2排出量のうちScope1・2について51%(総量)削減、2050年度ネットゼロ達成を目標としています(2018年度比)。

2022年5月には、FIT非化石証書を調達し、2021年度における物件共用部の電力を100%再生可能エネルギー化し、CO2排出量うちScope2の約99%を削減しました。

≪FIT 非化石証書とは≫
FIT…再生可能エネルギーの固定価格買取制度(Feed-in Tariff)
非化石証書…石油や石炭等の化石燃料を使っていない「非化石電源(電気をつくる方法)」で発電された電気が持つ「非化石価値」のみを取り出し証書化したものを指します。

そして、保有物件における電気消費量の実績カバー率を向上するべく、2023年7月末時点で70物件(ポートフォリオの50.4%相当)に電力量計測システムを設置しており、同システムにより専有部の電気消費量についても計測しています。なお、テナントに対しては、省エネルギーに係る各種啓蒙策を実施しています。

項目

2030年度までの目標(2018年度比)

2050年度までの目標

エネルギー消費量

20%(原単位)削減

CO2排出量(GHG)

Scope1-2:51%(総量)削減

Scope3:対応カテゴリの把握および範囲確定・算定

Scope1-2:ネットゼロ

水消費量

増加させない(共用部)

廃棄物量

リサイクル率65%(専有部工事にかかる排出)

エネルギー消費量

内訳

単位

2018年度

(基準年)

2019年度

2020年度 2021年度 2022年度

2030年度目標値
(2018年度対比)

実績 実績 実績 実績 カバー率

原単位削減率
(2018年度対比)

合計

総量
(MWh)

15,749

15,536

15,354

15,266

14,274

100.0%

-10.5%

-20%

原単位
(MWh/㎡)

0.086

0.086

0.083

0.082

0.077

電力

総量
(MWh)

14,273

13,926

13,860

13,705

13,009

100.0%

-10.3%

-

原単位
(MWh/㎡)

0.078

0.077

0.075

0.074

0.070

燃料

総量
(MWh)

1,248

1,365

1,263

1,313

1,091

100.0%

-13.3%

-

原単位
(MWh/㎡)

0.060

0.064

0.042

0.061

0.052

地域
冷暖房

総量
(MWh)

229

245

230

248

174

100.0%

-25.0%

-

原単位
(MWh/㎡)

0.016

0.017

0.016

0.017

0.012

CO2排出量(GHG)
内訳 単位

2018年度

(基準年)

2019年度 2020年度 2021年度 2022年度

2030年度目標値
(2018年度対比)

実績 実績 実績 実績 カバー率

総量削減率
(2018年度対比)

合計
(scope1+2)

総量
(t)

7,757

8,119

7,052

253

188

100.0%

-97.6%

-51%

原単位
(t/㎡)

0.043

0.045

0.038

0.001

0.001

直接排出
Scope1

総量
(t)

219

239

221

230

188

100.0%

-14.2%

-

原単位
(t/㎡)

0.010

0.011

0.007

0.011

0.009

間接排出
Scope2

総量
(t)

7,538

7,880

6,831

23

0

100.0%

-100%

-

原単位
(t/㎡)

0.041

0.044

0.037

0.000

0.000

水消費量
単位 2018年度
(基準年)
2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2030年度目標値
(2018年度対比)
実績 実績 実績 実績

カバー率

原単位削減率
(2018年度対比)

総量 (㎥)

11,035 10,817 11,263 9,879 10,637 100.0%

-5.8%

共用部において
増加させない

原単位 (㎥/㎡)

0.069 0.069 0.070 0.061 0.065
取水量:取水は、全て上水道から行っています。
項目 単位 2018年度
(基準年)
2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
上水使用料

総量 (㎥)

11,035 10,817 11,263 9,879 10,637

原単位 (㎥/㎡)

0.069 0.069 0.070 0.061 0.065
排水量:排水は、全て下水に行っています。
項目 単位 2018年度
(基準年)
2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
下排水量

総量 (㎥)

11,035 10,817 11,263 9,879 10,637

原単位 (㎥/㎡)

0.069 0.069 0.070 0.061 0.065
廃棄物量
単位 2018年度 2019年度 2020年度  2021年度  2022年度  目標・KPI
実績 実績 実績 実績 実績
総重量(t) 84 119 181 115 126 リサイクル率65%以上を維持

リサイクル量(t)

74 102 160 103 111

リサイクル率(%)

88.0% 85.7% 88.4% 89.8% 88.5%

※パフォーマンス注釈

  1. 集計期間
    各4月~3月を1年度とし、原則とし年次で実績を更新します。
  2. 報告範囲
    集計期間において期中売買が発生した物件は除き、通期で保有する物件のみを対象とします。
  3. 算出方法について
    1. 原単位は、(各消費・排出総量)÷(共有部延床面積(㎡))として計算します。
    2. 区分所有物件については、本投資法人の持分比率を当該のデータに乗じます。
    3. 廃棄物リサイクル率の計算は、以下の通りです。
      リサイクル率(%)=①リサイクル総量÷②総量×100
      ①運用会社のグループ会社である伊藤忠アーバンコミュニティが、発注する原状回復工事にて、排出された廃棄物の総量の内、リサイクル処理をされた量(t)
      ②同工事にて、排出された廃棄物の総量(t)

※以下の理由により、2022年度までに開示していた2018年度~2021年度の環境パフォーマンスデータ数値を修正しました。
・「03.算出方法について-02」記載の算出方法を新たに適用・エネルギー消費量-地域冷暖房の計算範囲を共用部に限定したこと等による修正
※過去の実績値については算出方法等の見直しに伴い遡及して修正する場合があります。

3. 環境パフォーマンスデータの第三者保証取得

2021年度のエネルギー消費量、CO2排出量(GHG)Scope1,2、及び水消費量の実績値データについては、㈱サステナビリティ会計事務所より「第三者保証(限定的保証)」を取得しています。保証報告書記載の数値には期中で取得・売却を行った物件のデータを含んでいるため、上記実績値と数値が異なっています。

4. グリーンリース条項の導入状況

テナントとの賃貸借契約において、不動産の省エネ等の環境負荷の低減に関する条項(グリーンリース条項)の導入を促進しています。2023年7月末時点、賃貸戸数のうち、約66.6%の住戸に係る賃貸借契約において、グリーンリース条項が導入されています。また、プロパティ・マネジメント会社との管理委託契約においても、グリーンリース条項の導入を推進しています。
なお、契約に基づきビルメンテナンス会社から、年1回LED設置に係る提案を頂いています。

5. サプライチェーンマネジメント

IRMは、「サステナビリティ方針」に掲げた個別項目の実現に向けてサプライヤーと協働して取り組むべく「サステナビリティ調達ポリシー」を定めています。本ポリシーに基づき、2016年度より全てのプロパティ・マネジメント会社を含む主要な取引先について、その取引開始時及び毎年1回、サステナビリティに関する取り組み状況を含むアンケートを実施し評価することで、サプライヤーとのエンゲージメントを強化しています。

また、サプライヤーからIRMの調達に関する方針の理解と協力を得ていくことが重要と考え、2017年度に主要な取引先であるPM会社・BM会社に対して「グリーン調達ガイドライン」を改めて通知しました。

B. 都市部への投資

多種多様な物件への投資を通じ、環境負荷の軽減を促進し、街やコミュニティの活性化に貢献しています。

1. 複合/多用途物件への投資

複合/多用途物件(2023年7月末時点で83物件(ポートフォリオの30%相当))への投資を通じ、物件入居者や周辺住民の生活利便性向上、環境負荷軽減を促進します。また、保有物件には店舗や公開空地を有しているものもあり、同物件に人が集まってくる等街やコミュニティの活性化に貢献しています。

  1. 公共交通機関の利用を促進し、CO2発生を抑制する駅近物件への投資 最寄駅から徒歩10分以内の物件:2023年7月末時点で95%(取得価格ベース)
    また、ADRは、物件取得に係り、最寄駅からの距離(アクセスの良否や徒歩分数)の基準を設けており、シングル・コンパクトタイプにおいては徒歩10分以内、ファミリー・ラージタイプにおいては15分以内を目途としています。
  2. スーパーやコンビニなど生活利便施設が併設される物件への投資
  3. 周辺住民の利用できる公開空地を有する物件(2023年7月末時点で7物件(ポートフォリオの2.5%相当))への投資
  4. バリアフリー設備等高齢者に対応した物件への投資

    ADRの保有物件は、建築基準法に基づき該当物件においては、車いす用の導線確保(スロープ・手すり・専用駐車場)を原則設置してます。
    なお、ブランシエール港北2にて、法定上は必要ないものの、テナントからの要望に基づき、エントランスへのスロープに手すりを設置しました。

2. 都市再生プロジェクト等*により開発された物件への投資

都市再生プロジェクト等により開発された物件等への投資を通じ、街やコミュニティの活性化、周辺住民の利便性を向上に貢献しています。

*J-REITは法制度上、物件建設等開発行為は制限されています。

01.   ピアネッタ汐留

地域住民の発意による新しい生産活動、生活のためのコミュニティづくりに賛同し、都市再生プロジェクトにより開発された地区にある物件に投資しています。

同地区は、イタリア文化と日本の伝統文化との調和と均衡による魅力的な景観を創出するだけではなく、持続的なまちづくりのための安全・安心なコミュニティづくりや、行政とのパートナーシップを充実・強化させています。

イタリアの街並みを表面的に採り入れるだけではなく、都市再生のあり方そのものにもイタリアの都市活性化の考え方を採用したところが、本地区の特徴です。

 

02. その他、ADRが取得した都市再開発での開発物件

3. 都市部の既存開発地域への投資

既存市街地へ投資することにより、水道や電気、そして小学校等既存のインフラが使用できます。
また、都市のスプロールを防ぎ、交通によるエネルギー消費や緑地の開発を防ぐことができます。

C. スポンサーグループとの協働

IRMのスポンサーグループと以下の様な取り組みを協働しています。

  1. 物件開発・購入
    複合/多用途物件開発等賃貸マンションにおける環境・地域に貢献できる案件の積極的な推進。グリーンビルディング認証の取得。
  2. 物件管理
    省エネルギー啓発等環境への配慮やAED設置等地域への貢献。

D.気候変動への方針

IRMは、気候変動問題は自然環境と社会構造に劇的な変化をもたらし、事業活動全体に大きな影響を与える重要課題であると認識しています。同問題への対応等については、以下リンクをご覧ください。

E.気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD*)提言への賛同

IRMは、2020年3月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下「TCFD」といいます。)」の提言に賛同しました。IRMは、 気候変動が、IRMおよび本投資法人の今後の持続的成長へ影響を及ぼす重要課題であると認識しています。TCFDの提言に基づき、気候変動が事業に与える影響を評価し、リスク及び機会についての対策を講じ、関連情報の開示を積極的に行うことにより、今後もサステナブルな社会の実現に貢献していきます。

なお、TCFD賛同に合わせて、TCFDコンソーシアム(TCFDに賛同した日本企業・団体により構成)にも入会しています。

*TCFDとは、Task Force on Climate-related Financial Disclosure の略で、主要国の中央銀行や金融規制当局で構成される金融安定理事会が2015年に設置しました。2017年6月には、金融市場の不安定化リスクを低減するため、企業に対して中長期の気候変動に起因する事業リスクと機会、これらの財務状況への影響及び具体的な対応策や戦略等を開示することを提言しています。

特定した気候関連リスクと機会および戦略(2021年3月現在)

リスク分類

時間軸 影響 戦略

移行リスク

政策・法規制

中期

・炭素税導入や排出量取引制度の拡大による、CO2排出コストの増加
・省エネ規制の強化に伴う、既存物件の改修コストの増加

・計画的な改修工事の実施
・グリーン電力証書・再エネ導入
・省エネ規制の基準を満たす新規物件取得

テクノロジー

中期

・再エネ・省エネ技術の進化・普及による、ポートフォリオの陳腐化を防ぐための新技術導入の費用増加

・計画的な改修工事の実施
・新技術導入済みの新規物件取得

市場

中期

・省エネ対応物件の価格上昇、未対応物件の価格下落可能性
・資金調達コスト上昇

・既存物件および新規取得物件におけるグリーンビル認証の取得推進

(グリーンボンド発行における適格不動産の拡大)

評判

短期

・投資家からの評判変化
・テナントからの評判変化による稼働率の低下

・TCFD他、投資家がESG投資の際に重要視する開示の発展
・テナントのニーズに応じたサービスの展開(防災・省エネ対応)

物理的リスク

急性

短期

・豪雨や洪水による浸水、内水氾濫被害の増加
・保険料の増加

・物件ごとの災害リスク評価実施
・ハード・ソフト両面の災害対策
・災害リスクの少ない物件の新規取得

慢性

長期

・海面上昇により海抜ゼロメートルエリアの物件が浸水する可能性
・平均気温の上昇、猛暑日の増加に伴う室内温度の上昇による快適性の低下

・物件ごとの災害リスク評価実施
・ハード・ソフト両面の災害対策
・省エネ効率・断熱性の高い物件の新規取得

機会

レジリエンス

短期

・自然災害に備えた物件の需要が高まる。

・浸水対策として、各物件の災害リスク評価結果に応じ、

ハード・ソフトの両面から、必要な対策を実施。

防水板の設置、災害訓練実施、防災グッズ配布等。

※TCFDが求める開示内容につきましては、今後も順次開示していく方針です。

水害リスクの把握

IRMでは、ポートフォリオに対し計画規模にて想定される浸水リスクを把握しています。

経済的損害は、火災保険にてカバーしています。

ガイドライン※※が定める電気設備への対応については、1階以下にキュービクルがある6物件を対象に、必要に応じて浸水対策を実施しています。

* 方法:洪水浸水想定区域(国土交通省、都道府県/外水(計画規模・最大規模・高潮)・内水)、浸水予想区域図、ハザードマップ等による状況把握。 浸水の可能性にあたっては計画規模を採用しています。

** 2020年6月に国土交通省から公表された「建築物における電気設備の浸水対策に関するガイドライン」のことをいいます。

また、テナントの安全確保への対応としえ、2m以上の浸水の恐れがあり且つ1階に住戸がある6物件を対象に、 上階への避難度誘導すべく、浸水センサー等を設置しています。

F.気候変動イニシアティブ(JCI)への参加

IRMは、「気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative)」(以下「JCI」といいます。)の基本的な考え方に賛同し、2019年7月にJCIに参加しました。
JCIは、2015年の地球温暖化防止に向けた「パリ協定」成立を受けて、気候変動対策に積極的に取り組む日本の企業や自治体、非政府組織などが主体となって設立し、自主的に脱炭素社会の実現を目指すネットワークです。日本全体のムーブメントを創出し、参加メンバーの活動サポートや政府への働きかけ、国際社会との連携活動を通して、脱炭素社会の実現を目指しています。
*JCIの詳細については、「気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative)」のウェブサイトをご覧ください。